シュピゲラウのクラフトビールグラス第4弾『バレルエイジドビール』が登場した。
古樽でエイジングしたビールの複雑なアロマやテイストを最大限に引き出すため、開発にはアメリカでバレルエイジを率先する醸造所のグレイトディヴァイド、グリーンフラッシュ、ユインタ、シガーシティの協力を得たという。
テイスティングの比較用に用意したグラスは『ビール・チューリップ』。
バレルエイジ(樽熟成)のビール4本を飲み比べながら、味わいの違いを確認したい。
ウイスキーへの造詣も深い、神楽坂のビストロパブ『ロイヤルスコッツマン』の店主 小貫友寛さんと、小誌編集主幹の藤原ヒロユキがその秘めたポテンシャルを明らかにする。
── 第一印象はいかがでしょうか?
藤原 バレルエイジドビール(以下バレル)は、サイズはビール・チューリップ(以下チューリップ)と飲み口の直径は同じだけど、全体のフォルムはかなり違います。グラスの膨らみ方(角度)と飲み口までの距離で、ビールの味わいは大きく変わります。
──では、さっそくテイスティングに入りましょう。
今日は、開発に参画したグリーンフラッシュを含め、4本のバレルエイジを用意しました。まずは、ストーンのアロガントからお願いします。
藤原 バレルは木の香りを感じるね。一方チューリップはカラメル香を感じる。
小貫 苦みに関してはバレルの方が強く感じますね。アルコールが立つのでしょうか。アフターの香りもバレルの方がきれいに残りますね。
藤原 バレルの方が(ビールが)舌にゆっくり届く印象です。これが、思いのほか味わい、香りに大きな差となって現れます。チューリップは中庸ですが、バレルは香りの立ち方が突出しています。
小貫 アロガントは、比較的穏やかなバレルエイジという印象がありましたが、このバレルで飲むと、ずいぶん尖がった個性のビールだったことが改めてわかりました。
藤原 全体の香りの強さはさほど変わりませんが、そのバランスは大きく違うね。
小貫 そうですね。バレルは甘い香りが際立ち、カカオのような風味を感じます。
藤原 バレルは、香りもテイストも甘さがはっきりわかる印象です。
小貫 チューリップでは、渾然一体となっていた香りや風味が、バレルで飲むと、ひとつひとつひも解かれるように感じます。
藤原 このビールは、先に話した、バレルの「香りのひも解き方」が顕著だね。チューリップだと“ほわっとした甘い香り”なんだけど、バレルで飲むと、そこにはナッツだったり、花であったり、その甘い香りの正体がはっきり見えてきます。
小貫 そうですね。もうひとつぼくが感心したのは、香り同様味わいもしっかり分析するのですが、決して刺々しくならず、口当たりがスムーズなことです。ちょっとヤバいっす。
藤原 確かに。バレルエイジのビールはアルコール度数が高く複雑なものが多いけど、このバレル(グラス)を使うとあっという間にスーッと飲めてしまうよね。
小貫 アフターの香りもしっかり出すから、ハードリカーやワインも入れて飲みたくなるグラスですね。
藤原 バレルで飲むとチューリップに対しロースト香がしっかりでるね。
小貫 このビールは熟成の途中でコーヒーを入れるのですが、そのフレーバーがはっきり出ますね。 個人的によく飲むビールなのですが、これまでとは大きく印象が変わりました。
藤原 このビールが、一番グラスによる香り、味わいの違いが大きかったね。こうなると、ビールのスタイルによってグラスを一つひとつ変えなきゃならん、と、強迫観念がでてくるね(笑)。
── さて、4本のビールで試飲を行ないましたが、改めて『バレルエイジドビール』の感想をお聞かせください。
藤原 木樽熟成したバレルエイジは、その特徴である複雑な香りが『バレルエイジドビール』のグラスで飲むとしっかり感じ取れて口の中で広がりました。グラスって、ホントに怖いですね。
小貫 バレルエイジは、ぼくには特別なビールなんです。例えばリラックスしたい時や何かやり終えた時に飲みたい、いうなれば「至福の一杯」なんです。アフターの余韻を楽しみたいので、ふだんはウイスキーグラスで飲んでいたんです。これからは、この『バレルエイジドビール』を使います。「きたな、このグラス!」って感じです。
藤原 人もそれぞれ個性があって、一番似合う服だって各々違うからね。ビールだってそれぞれの魅力や特徴がある。それをうまく引き立てないと、そのビールの本当の価値を知らないまま通り過ぎてしまう。
小貫 ホント、もったいない話ですよね。
Wolfgang Angyal[Wolfgang_Angyal]
RSN Japan株式会社 代表取締役社長 / シュピゲラウ・ジャパン ビアグラス・エデュケイター
オーストリア生まれ。1985年「技能五輪国際大会」で金メダルを受賞。 その後「辻学園日本調理師専門学校」で教授を務める。2000年より現職。 グラスとワインの関係を、最初に日本人に認識させた。
Comment